スイカのおはなし


あたり一面、スイカ畑が広がっています。
空からは、まぶしい太陽の光が注がれています。
季節は、夏。
収穫を目前に控えたこの畑には、
いたるところにスイカが、見え隠れしています。
スイカは大きく実り、緑色のしま模様もくっきりと濃く、
どっしりとしています。

そんな畑の片隅に、ひとつだけ、
おかしな形のスイカがありました。
どのスイカも大きくて丸いのに、
それだけは、小さくて丸い形をしています。
しま模様も細々としていて、今にも消え入りそうです。

ひとつだけ形が違うということで、そのスイカは
いつも、いじめられていました。
「へんな形だなぁ。」
「きっとまずくて、捨てられちゃうよ。」
小さなスイカは悲しくて、くやしくてたまりませんでしたが、
何も言い返すことができませんでした。

「どうして、ぼくだけ、みんなと形が違うのだろう・・・。」
ひとり、ぽつんと空を見上げて、つぶやきます。
太陽が黙ったまま、笑顔で見つめています。
「ねぇ、おひさま。どうしてぼくだけ、こんな形なの?」
太陽にたずねても、何も答えてはくれません。
いつもと同じ、光を注ぐばかりです。

「おひさま。ぼく、小さくてもいいよ。
だって、おひさまの光は、ぼくのからだの奥の奥の、
ずっと奥まで届いて、あたためてくれるもの。」
小さなスイカは、ほかのスイカたちから、
どんなに意地悪なことを言われても、
空を見上げることだけは、忘れませんでした。

夕陽が山あいにかくれはじめた頃、畑のあぜ道を、
おばあちゃんと女の子が、手をつないで通りかかりました。
「あれぇ、おばあちゃん。このスイカ、へんな形だよ。」
とつぜん声をあげた女の子につられ、
おばあちゃんが畑をのぞき込むと、
そこにはあの、小さなスイカがありました。
「あれまぁ。こんなところに、小玉スイカがなっとる。」
「小玉スイカ?」
「そうだぁ。どれ、うちに持って帰って、食べてみるかえ。」
そう言うと、ぷつんとちぎり、スイカを抱えて帰りました。



「ぼく、小玉スイカっていう名前なんだ・・。」
おばあちゃんに抱えられた小さなスイカは、
どきどきしながら、その名前をつぶやきました。

小玉スイカは、井戸水でほどよく冷やされ、
夕食後の食卓へと出されました。
「これはなぁ、小さいけんど、中身はうまいぞー。」
そう言いながら、おばあちゃんが包丁を入れました。
ざくんと割られたスイカは、なんとよく熟れた、
赤い実をしていました。
「あまいねー。」
「おいしいねぇ。」
みな口々に言い合いながら、すっかり食べてしまいました。

その翌日です。
スイカ畑に、あの小さなスイカのうわさ話が広がりました。
鳥の便りが届いたのです。
「あいつ、小玉スイカっていうらしいぞ。」
「中身はうまかったって。全部食べられたそうだ。」
大きくて丸いスイカたちは、そのうわさ話をしながら、
なんだかくやしいような、でもちょっと安心したような、
不思議な気持ちになりながら、
自分たちの収穫の日を、待ちました。



 おわり